研究分野:
量子多体系の理論, 量子情報物理学, 量子シミュレーション
Keyword
・Quantum information science, many-body entanglement
・Topological phases of matter
・Many-body localization
・Flat band
・Quantum dynamics, thermalization
・Quantum phases in cold atom in optical lattice
・Quantum simulation of Lattice gauge theory
研究内容:
広義には量子多体系と量子情報科学の融合領域を理論的に研究しています。
近年、量子計算機(いわゆる量子コンピュータ)や光格子冷却原子実験系の開発が著しく進んでいます。これらの系に密接に関係した量子回路模型や人工量子多体系の理論模型をターゲットに研究を進めています。特に、トポロジカル量子物性に代表される量子凝縮系の理論と量子情報物理学の理論がオーバーラップする領域に興味があり、この領域における新奇な物理現象の探索や新しい物理概念の構築を目指しています。
より具体的には、量子シミュレーション、トポロジカル物性、格子ゲージ理論、多体局在、多体量子スピン系の物理や量子情報分野において構築されてきた理論的枠組みを融合させた研究を推進しています。特に近年、量子多体系における様々な量子相の研究は量子情報分野との融合が進んできているのでこの研究領域に焦点を当て研究を進めています。
研究業績などの情報は以下を参照してください:
Google scholar (最新の論文と引用数など):
https://scholar.google.com/citations?user=PTAklukAAAAJ&hl=ja
Research map:
https://researchmap.jp/-yk_kuno
現在の科学研究費助成事業(KAKEN)に基づく研究課題 :
https://nrid.nii.ac.jp/ja/nrid/1000030753628/
研究テーマ紹介:
(1)量子回路模型における量子エンタングルメント非平衡ダイナミクス、観測誘起型量子相転移、
および、観測誘起型トポロジカル相の研究:
多量子ビット(多体量子スピン系)を量子回路上に置き、様々な量子ゲートや量子測定(特に射影測定)行ったときに発現する量子エンタングルメントの非平衡ダイナミクス特性や量子測定の反作用によって起きる非平衡ダイナミクスの探求、さらには観測誘起型量子相転移を統計力学的な観点から研究しています。特に量子情報分野で発展してきたスタビライザー形式を用いたクリフォード型量子回路模型に興味をもって研究を進めています。
関係する研究論文:
https://arxiv.org/abs/2307.07170
https://arxiv.org/abs/2209.08897
https://arxiv.org/abs/2302.13692
(2) トポロジカル秩序相および堅牢な量子メモリ相の研究:
トポロジカル秩序相とよばれる量子多体論で研究されていた量子相がノイズに対しても堅牢な量子メモリとなることが近年理論的に明らかになってきています。その中でもトリックコード模型におけるトポロジカル秩序相そのエンタングルメント特性、および格子ゲージ理論[主なレビュー: Kogut,1979]に端を発するゲージ理論的模型における部分系コードについての理論的な研究を進めています。
関係する研究論文:
https://arxiv.org/abs/2304.05718
https://arxiv.org/abs/2311.16651
(3) トポロジカル量子現象およびその量子シミュレーションの研究:
量子多体系において発現するトポロジカル量子現象、特にトポロジカル量子ポンプ[Thouless, 1983]の発現機構の探求および新奇なトポロジカル量子ポンプの構成などをトポロジカル不変量やバルク・エッジ対応の概念を用いて広く研究しています。また、冷却原子系における量子シミュレーションとしてのトポロジカル量子ポンプの研究も行っています。
関係する研究論文:
Y. Hatsugai and Y. Kuno, Phys. Rev. B 107, 235106 (2023)
Y. Kuno and Y. Hatsugai, Phys. Rev. B 104, 045113 (2021)
Y. Kuno and Y. Hatsugai, Phys. Rev. Research 2, 042024(Rapid communication) (2020)
Y. Kuno, Phys. Rev. B 100, 054108 (2019)
(4) フラットバンド系における多体局在現象、熱平衡化、量子状態の保護の研究:
粒子のトンネリング干渉効果によって発現するフラットバンド系はコンパクト局在状態とよばれる特異な1粒子基底を取ることができます。この局在粒子が多体系において多数存在するとき不純物によらない局在現象が起きます。このような局在現象下で粒子間相互作用が印加された場合、フラットバンド多体局在現象と呼ばれる現象が出現する可能性があり、この新奇な多体局在現象を研究しています。この多体局在現象は初期の量子状態の波動関数の情報が保存されることが示唆されています。さらに初期状態の保護は系の熱平衡化や固有状態熱化仮説の破れの例を提供し統計力学の基礎的問題とも密接に関係しています。
関係する研究論文:
Y. Kuno, T. Orito, and I. Ichinose, New Journal of Physics 22, 013032 (2020)
Y. Kuno, T Mizoguchi, Y. Hatsugai Physical Review B 102, 241115(Rapid Communication) (2020)
T. Orito, Y. Kuno, and I. Ichinose, Phys. Rev. B 103, L060301 (Letter) (2021)